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読書記録:『あなたはコンピュータを理解していますか?』 梅津信幸

『あなたはコンピュータを理解していますか?』 梅津信幸

 タイトルにこそ「コンピュータ」と銘打っているものの、内容は情報学の基礎的な事項が大半を占めた。というのも、機械としてのコンピュータよりも、その背後にある理論や概念を説明することに意識を置いているからだ。そういった意味では、コンピュータについて詳しく知りたいと思ってこの書を取ると、面食らってしまうかもしれない。また、概念を専門外の人にできる限り理解してもらおうと、豊富に比喩を用いているが、それが返って読者の退屈を誘っているかもしれない。実際、比喩と概念の実態を対応させながら本書を読んでいくと、結構理解に躓くことが多かった。とすると、あまり深く考えず、流れるように読むのが、門外漢の定石かもしれない。

 

 では、具体的には何が説明されているか。小生はブログのタイトルにも書かれているように門外漢なので、詳しい内容は理解できていないが、極めて重要だと思われる概念は「情報」と「データ」だと思われる。ここでいう「情報」とは、情報の中にある識者にとって有益な情報のことであり、情報内の本質的要素といえるものだ。本書の中にある例を引用すれば、それは味噌汁の中にある味噌や味の素といった部分のことである。一方の「データ」とは、いわゆる情報という煩雑なもので、中にはゴミも含まれている。本書内では器という表現も用いられた。この「データ」の中にどれだけ「情報」が入っているかを表す数値が「エントロピー」であり、優れた情報伝達媒介物ほど「エントロピー」が高いと考えていいだろう(と理解したが、誤りかもしれない)。

 このほかにも、「チャネル」や「有限オートマトン」といった情報科学の領域において重要な概念が多数展開されたが、これらについては説明はあまりしないでおこう(理解が正しいかわからないし)。しかしながら、一応それらの概念に触れておくとするなら、「チャネル」とは情報を伝達するパイプであり、「有限オートマトン」とはコンピュータの作業のプロセスを双六的な、マスと線で結んだような図で表すものだろう。「チャネル」については、それぞれの伝達手段によって「エントロピー」の量が違うため、もとの「情報」のうち一体いくつを伝えられるのかという問題があることがわかる。これは、更にいうと、伝達媒体から情報を受け取るという過程おいても同様の問題があり、たとえば、文字という媒体から脳はどれだけの「情報」を抽出できるのか、ということである(間違ってそう)。「有限オートマトン」は、これからアルゴリズムという概念へ発展するのかなあ、という印象を受けた。

 

 最後に、この本の巻末には、著者の読書観とこれからこの分野についてより深く知りたい人向けの参考文献が付けられている。著者の読書観、同じような理論について解説してある書は何冊も読んだほうがいい、というのは一定の価値があるが、一冊の本を何回も読むことにも大きな意味があるだろう。少なくとも、受験を乗り越えてきた(失敗しているが)身としては、同じ書を徹底的に理解するよう努める能力も、無視できないものだと思える。

 

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